テイント解析 — ソフトウェアセキュリティの鍵となる主要概念を解説

このブログは「Taint Analysis - Key Concepts Explained」を翻訳・一部加筆したものです。

テイント解析 (Taint Analysis) は、ソフトウェアセキュリティにおいて極めて重要な手法であり、汚染されたデータ (tainted data) の流れを追跡することで、ソフトウェアの脆弱性を特定することに焦点を当てています。この基本的な技術は、アプリケーション内でデータがどのように扱われているかを開発者が理解し、機密情報を保護できるようにするものです。テイント解析を活用することで、組織はデータ漏えいやインジェクション攻撃といったリスクを大幅に低減できます。

ソフトウェアシステムがますます複雑化する中で、テイント解析を理解することは開発において欠かせない要素となっています。本稿では、テイント解析の中核となる概念、動作の仕組み、そしてその応用について掘り下げて解説します。

テイント解析 (Taint Analysis) とは? 

テイント解析は、静的解析によるセキュリティテスト (Static Analysis Security Testing、略してSAST) で用いられる中核的な手法です。この手法は、特に注意すべきデータの流れをプログラム内で追跡し、不適切に扱われていないかを確認します。適切に構成されたテイント解析を開発プロセスに統合することで、開発者はセキュリティリスクを事前に防止することができるようになります。

テストや動的解析と異なり、静的テイント解析は解析対象のプログラムを実行しません。そのため、すべての実行経路を考慮することができ、堅牢なセキュリティ対策や法規制への準拠を維持するうえで欠かせない手法となっています。

テイント解析の主要な概念 

テイント解析は、解析対象のプログラム内でどのデータフローを追跡し、どれを除外するかを記述した設定によって構成されます。その設定には、主に以下の3つの基本要素があります。

  • ソース (Source) : 機密データの起点。解析対象において、ユーザー入力や秘密情報などを取得するAPI呼び出しがこれに該当します。
  • シンク (Sink) : 機密データが流入してはならない場所。通常、データを出力したり処理したりする関数やメソッドの引数などです。 
  • サニタイザ (Sanitizer) : 入力データに機密情報が含まれているかを検査したり、データを変換して機密性を除去したりするコードです。

例:平文パスワードの保存を検出するテイント解析

  • ソース は、ユーザーが入力した平文パスワードを返す関数呼び出し。
  • シンク は、データベースに内容を追加または変更する関数の引数。
  • サニタイザ は、与えられたパスワードを安全にハッシュ化する関数呼び出し。

テイント解析の仕組み 

テイント解析は通常、解析対象のプログラムを表す1つまたは複数のグラフ構造を構築します。これにより、テイントチェックの問題はグラフ到達可能性の問題として効率的に解けるようになります。このグラフを構築するために、テイント解析ではコールグラフ (Call Graph) やポインタ解析 (Pointer Analysis) といった補助的な解析が必要です。

ただし、静的解析によって構築されるグラフは常にプログラムの近似表現に過ぎません。なぜなら、任意のプログラムが実行時に機密データをシンクに渡すかどうかを厳密に判定することは一般に決定不能だからです。したがって、誤検知 (False Positive) や検出漏れ (False Negative) を完全に排除することはできません。誤検知を減らすことは望ましいものの、より精密な近似を行うには高い計算コストが必要になります。

テイント解析の応用 

テイント解析によって検出できる代表的な脆弱性には、以下のようなものがあります。

  • SQLインジェクション
  • クロスサイトスクリプティング (XSS)
  • メモリ解放後の使用 (Use-After-Free)
  • メモリの二重解放 (Double-Free)
  • メモリリーク
  • APIの誤用

テイント解析は、潜在的なセキュリティ問題を検出するために2つの方向から利用できます。

  1. 外部入力の追跡(攻撃の入口)
    外部から来るデータは信頼できないため、「汚染された (tainted) 」データとみなします。こうしたデータが直接データベースコマンド(SQLインジェクション)や実行コード(コードインジェクション)に渡されないようにする必要があります。テイント解析によって、そのようなデータの流れを追跡し、追加のサニタイズが必要な箇所を特定できます。

  2. 機密データの流出防止(攻撃の出口)
    逆方向の解析も有効です。この場合、「汚染された (tainted) 」とは、機密データが信頼できる範囲外へ出てはならないことを意味します。たとえば、患者情報や銀行口座情報などのプライベートデータが、ネットワーク経由で送信されたり、平文でログ出力されたりしないようにすることが目的です。

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