救急対応 2020-10
「脳卒中」
秋田大学大学院医学系研究科救急集中治療医学講座
奥山 学
© 2020 M.Okuyama Akita University Graduate School of Medicine 1
救急隊から受け入れ要請
 80歳代男性
 朝食後に体調不良を訴え救急要請
 呼吸数18回 SpO2 95%(room air) →96%(O2 マスク6L)
 BP 180/64 HR80
 JCS3、呂律が回らない、右片麻痺、
 CPSS F○ A○ S○
 KPSS C-0-1、M-4-0、V-1
 BT 36.9℃
 内科:高血圧内服中
 到着まで10分
受け入れまでの準備
 輸液
 採血 血算、生化学、APTT PT
 頭部CT
 (胸部写真)
 十二誘導心電図 (afの有無、虚血性心疾患の合併)
CPSS
KPSS
倉敷プレホスピタルストロークスケール
KPSSはNIHSSとよく相関することが示されている。
救急隊はCPSSとKPSSを評価してくる
救急隊の報告を理解できるようにしておく
ISLS (Immediate Stroke Life Support)
A:気道開通
B:SpO2<93%→酸素投与
C:輸液
採血、血液、凝固、生化学、血糖
十二誘導心電図
D:麻痺、瞳孔、意識レベル(GCS)
NIHSS
E:脱衣、体温測定
頭部CT
NIHSS
(National Institute of
Health Stroke Scale)
NIHSSの弱点
椎骨脳底動脈領域の症状を診ていない
 めまい、浮動感、眼振、複視、嚥下障害など
TIA(transient ischemic attack)の可能性
 脳,脊髄,網膜の虚血によって惹起される急性梗塞に至らない 一過
性の神経障害
血圧 180/64mmHg
降圧するべきか?
脳卒中患者は血圧が高い
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Ikeda, Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study
BMJ. 2002 Oct 12; 325(7368): 800–802.
脳梗塞 病着時血圧と予後
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収縮期血圧管理 降圧薬使用、生理食塩水ボーラス投与、昇圧薬投与 開始後24時間
Group1 140-160mmHg
Group2 161-180mmHg 90日後の神経我的スコア(mRS)が良好
Group3 181-200mmHg 頭蓋内出血が増加
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modified Rankin Scale
脳卒中治療ガイドライン
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Guidelines for the Early Management of Patients
With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update AHA/ASA
GENERAL SUPPORTIVE CARE AND EMERGENCY TREATMENT
1. 必要に応じて気管挿管・人工呼吸器治療(強い推奨)
2. SpO2>94%を保つように酸素投与(強い推奨)
3. 低酸素出ない患者に酸素投与は推奨されない
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Guidelines for the Early Management of Patients
With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update AHA/ASAGENERAL SUPPORTIVE CARE AND EMERGENCY TREATMENT
1. 低血圧や循環血液量減少があれば
是正する(急速輸液等)(強い推奨)
2. 血栓溶解療法を受ける患者は慎重に
sBP<185mmHg、dBP<110mmHgに血
圧を下げる(強い推奨)
3. 機械的血栓回収療法を受ける患者も
線溶療法を受ける前に
sBP<185mmHg、dBP<110mmHgに維
持するのは理にかなっている(中等
度の推奨)
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IN-HOSPITAL MANAGEMENT OF AIS: GENERAL SUPPORTIVE CARE Guidelines for the Early Management of Patients
With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update AHA/ASA
1. 低血圧や循環血液量減少があれば是正
する(急速輸液等)(強い推奨)
2. 冠動脈疾患、心不全、大動脈解離、脳出
血、子癇などの合併症に対しては早期の
降圧療法の適応となる(強い推奨)
3. 合併症がなく線溶療法や機械的血栓回収
療法を受けないBP≧220/120の患者は、早
期の高圧療法が必要となる。48-72時間の
降圧療法の開始や再開の効果は不明で
ある。発症後24時間で15%の低下が適正
と考えられている(弱い推奨)
4. 合併症がなく線溶療法や機械的血栓回収
療法を受けないBP<220/120の患者は、48-
72時間での降圧療法の開始や再開は死
亡や神経学的予後を改善しないが(推奨さ
れない)
Primary, Secondary, and Safety
Outcomes at 90 Days.
Anderson CS et al. N Engl J Med 2013;368:2355-2365.
<140mmHg vs. <180mmHg
死亡・高度機能障害 52.0% vs 55.6%
Modified Rankin scale 有意差あり
くも膜下出血
 再発予防のためには、十分な鎮痛、鎮静、降圧することを考慮して
もよい(グレードC1)(脳卒中治療ガイドライン2015)
 収縮期血圧を160mmHg未満にすることは理に適っている
二カルジピン推奨 (AHAガイドライン2012)
まとめ
脳出血
 血圧が140mmHgをこえていたら140mmHg未満になるように二カルジピンを持続投与する
脳梗塞
 tPAの適応があったら収縮期血圧185mmHg未満、拡張期血圧110mmHg未満になるように二カ
ルジピンを持続静注する
 tPAの適応がない場合、収縮期血圧220mmHg以上もしくは拡張期血圧120mmHg以上だった場
合は慎重に(救急で急いでやる必要はない)二カルジピンの持続静注を開始し、24時間で15%
以内の降圧を行う
(多くの場合は24時間で自然に降圧する)
くも膜下出血
 二カルジピンを持続静注する。日本では目標値は示されていない。(AHAでは収縮期血圧が
160mmHg未満)
➡SAHが疑われるときはCTを撮影すべき
➡どういう時にSAHを疑う?
頭痛を訴える患者は全例CTを撮るべきか?
今尾、初療機関でくも膜下出血と診断できなかった 頭痛患者に関する検討。脳卒中の外科 44: 2016
• 初回診察時に見逃されるくも膜下出血はほ とんどが minor leak といわれる軽症例であるため ,
意識障害はなく自ら歩いて医療機関を受診できるような walk in SAH であることが多い
• くも膜下腔に出た血液は時間の経過とともに髄液で希釈されてしまうため,発症から CT 実施まで
の時間が長くなるほど CT による診断が困難になる.
• 見逃された13例中8例にCTが施行され、うち6例で正しく診断されなかった
初診時に見逃されたSAH
診断が遅れたSAH
 突然発症で即座に痛みがピークに達する頭痛であるということが最
も強調されるべき点と考えられる .
 患者に頭痛がいつ起こったかを尋ねると曖昧なものではなく,「朝食
を食べ始めた直後」や「トイレで排便していたとき」など具体的な発症
時間の回答が得られることが多い
 頭痛は数時間で消失することはなく,鎮痛剤などでいったんは改善
してもふたたび頭痛が出現し,数日間は持続することが多い
発症から6時間を超えたSAHはCTの感度が低下する

ER residency training 2020 10